バーチャルスター☆アリス・L・マルヴィンの空動

だから言っただろド直球球速195kmとかでストライク決めてくるって
かろうじて致命傷で済んだ
さてネタバレタイムです、2万円の同人誌(アニメ全話入りブルーレイ付き)買ってない人はUターン。

同人誌の感想は週末まとめるとして、特典小冊子についてたイラストが尊くてつらかったんですよ。伍長が少尉やみんなを乗せて笑ってるやつ。「ああ、伍長ってこういうふうにのんきに笑ってたいだろうな」って思ってしんどかった。

伍長は絶対に王冠や戦車相手に戦いたいと思ってるタイプじゃない。そういう英雄に一瞬だけ憧れたこともあっただろうけれども、次の瞬間に「いやーやっぱ痛くて怖いのイヤだな」とか主つてそうなタイプだ。農家か漁村に生まれて畑を耕したり魚をとったりするほうが向いてたろう。

もし仮に伍長がなんの憂いもなく自分の道を自由に選べるとしたら医者か医療関係者となってたんじゃなかろうか。まあ、悩みの多い道ではあるけれども、たまの休みには猫やら家族やら相手にしてのんきに笑ってたと思う。

では、少尉はどうか。

いま私が伍長に対して書いたように、仮になんの憂いもなく自分の道を選んだとして彼女はどのような場所でいつ笑うのか。

思いいたらなかった。

考えても考えても、アリス・L・マルヴィンが当たり前に自然に幸せに笑っている姿が想像できない。

たとえば、カルッセルですべて終わりヴイッターがコーヒーを奢ったとき彼女は笑う。「きずのありか」で、ステッキンにハーブティを入れてもらったときも笑う。エリスからドレスを押し付けられて「揃いのドレスを着ます」といったときも笑う。

アリスの笑いは【誰かになにかしたとき】か【誰かになにかされたとき】に笑うのであって、【自分から笑う】ことは少ない。ないとは言わないがごくまれだ。伍長のように、猫やら家族やら相手してのんきに笑ってそうだ、というシーンを想像するのが難しい。

作中で【機械のようだ】とか【ポストになりたい】と出ているけれども、自然な笑いを思い浮かべられないアリスは、もともと【自分なんてない】存在なのではないか。

伍長の方は逆に【自分を失ってしまった】存在である。23巻かけてなくした自分を取り戻していった。アリスと伍長の対比はイヤというほどされているけれども、伍長が【持っていた自分をなくしていた】とするならアリスは【本来自分なんてない】んじゃないか。

そう考えると、アリスの行動というのは【こうせねばならない】というのが先にあるような気がする。プログラムは【こうせねば】という条件で出来上がっているが、アリス・L・マルヴィンは【こうせねばならない】という概念で出来上がってはいないか?

入力された事柄が【正義】かどうか判断し、真なら通し、偽なら排除する。そういうプログラムが精密化して人格レベルにまで至ったのがアリスなんじゃないのか。

ときに、人間の感情がないというキャラクターは多い。たいてい殺人鬼として書かれる。けれどアリスは【限りなく人間の感情を尊重しながら感情がない】キャラなんじゃないか。彼女は【人間の感情を尊重せねばならない】と思ってるからそうしている。【正義】であらねばならない、と考えるからそうする。

一番これが違和感があって出てきたのが、手紙事件のときだ。「私だって母も父も姉も弟も大好きだ」というようなことをアリスはいうわけだ。全く間違いがなくおかしいところもないセリフだ。アリスの母が義理の母であり、弟も腹違いでなければだ。

そもそも思春期の娘が、いや思春期の子供なら自分の親の子作りとか性事情のことなんぞ知りたくもない話である(いやいい大人になってもうんざりする話ではあるが)。それが、母親と死に別れた娘にしてみれば、やもめの父親が若い嫁もらって子供を作るなんてのは生理的にイヤなはずである。

事実、三姉妹のうち二番目のエリスは明確に父親に反抗している。だいたい、アリスが18で弟が5歳ということはアリスが13歳のときに出来た子だ。しかも三姉妹の年齢を推し量ると、上のソリスは25歳前後。

アリスたちの義母がいくつかはしらんが、5歳の子供を持ってる母親であるとすると、嫁いできたときは最低でも30くらいである。それ以上だと、世界の時代背景的に子供を作るにはちと遅い。現代ならまあ困らないですむけど。カウプランを考慮にいれたとしても、「嫁は若いうちが…」なんてクソど田舎の価値観が帝国で滅びてないはずがない。

そうすると、上のソリスが20歳くらいのときに後妻が来たとして、その後妻と10歳くらいしか離れてないという計算になる。これは割としんどい。下手するともっと年齢差が縮む。

これに全く違和感も持たず反抗心も持たず「家族が大好き」というアリスは相当ゆがんでいる。もしくは、【家族は好きであるべき】という建前を全く考えずに受け入れている。多分こっちだと思う。

義母にしたってアリスに違和感をもっているという描写はされている。そりゃ18の義理の娘とか扱いにくいに決まっている。

アリスただ1人が「家族は大好きだ」と言い切ってるのである。なんのてらいもなく。

まるでバーチャルスターのように、アリスはプログラムで動いている。

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