モンキーハンティングって高校の物理であったそうで。
そうで、ってのはわたしはやった記憶がないからです。
私立文系大学を目指す女子校の生徒に物理を教えるなど、猿回しの猿に芸を仕込むほうが楽ってもんです。ですから多分課程から省略されたんでしょうな。
気の毒なのはわたしのクラスメート。その程度なのに、親の意向で理転して医大受験させられてました。
「兄貴がバカだから! 野◯クルゼ(学生寮が付いた医大専門の学習塾。ここに入ったらたぶん自由はない)3年行って医大落ちたから! わたしに順番が回ってきた!」
医者の子どもだと親ガチャ大成功ですが、こういうハズレもあります。彼女はキレまくってました。
もちろんわたしも物理においては猿回しのサル程度の頭しかありません。そして今月の話において、音が出てきますがその物理的特性はウィキペディア読むだけで目が滑りました。つーわけで先月今月の音の話についてはわたしを信じないでください。まあ全部信憑性ないけどね。
いいわけはともかく、今月の目玉としては、『現在の技術においてはオカルト的に見える現象であっても、未来においては科学的理論的に説明が付くかもしれない』という話でしょう。
たとえば、セントエルモの火なんてのは昔完全に神秘扱いされてました。いまではただの静電気だと解明されてます。
だから、『魂』もひょっとしたら未来では科学的理論的に説明できるかもしれない。ブランバルド大佐はそう語ります。
そして、先月の伍長の言葉が完全にひっくり返されることに。
甲高い音で伍長はアインシュス・ゲヴェーアの場所を特定しました。しかし、甲高い音であれば距離によって減衰され、伍長の耳に届くはずがない、と。
それなのに伍長は所在が分かった。それは『現在』においては『神秘』に入るのではないかと。
さてここで出てくる考察ポイントが幾つかあります。
1つは、『神秘』の中身について。
それに付随して、『現在における神秘』の現在は、いつか、という点。
もう1つはブランバルド大佐の判断は下手すると伍長が裏切り者と言われかねないって点です。
まずブランバルド大佐の判断からいきます。
『伍長が銃の場所を把握できたのは神秘の力かもしれない』というのはかなり知られるとやばい話です。普通なら、『伍長が神秘の力を持っている』というより、『伍長がサソリと関係してたから銃の場所を知っていた』と考えたほうが楽だからです。伍長を知らない人から見たら、サソリと戦ったからって単に裏切ったからという考えもできます。
一応戦車内の話ですので、おそらく他に漏れないと分かっていてブランバルド大佐は話してるんだと思います。よかったね伍長。
そしてもう1つ、『神秘』の中身です。これは、『現在』がいつかという点からいきましょう。
『【現在】の技術においてはオカルト的に見える現象であっても、未来においては科学的理論的に説明が付くかもしれない』
この【現在】は、2つあります。
1つは作中の現在。パンシザ世界での現在ですね。正確にいえばブランバルド大佐が知りうる時点での現在です。わざわざブランバルド大佐と言ったのは、この話において科学の発達は個人によって差があるからです。例えばミュゼとブランバルド大佐ではミュゼのほうが科学的な視点では進んでいますし、銀の車輪結社はその上かもしれません。
ただし、ブランバルド大佐のセリフからの話なので、ミュゼや結社の視点はのぞいていいと思います。
あくまでパンシザ世界でのインテリとしての視点からみた『現在』でしょうね。
作者の岩永先生から「パンシザ世界は地球とは違う」と出ているのであまり史実と当てはめたくはないんですが、わたしは第一次大戦の終わった20世紀初頭の科学知識をイメージしています。
この時代だと、日本でやっと無線電話機が実用化されたくらい。大正3年ですね。鬼殺隊があるころ。ねえよ。
参考 https://www.postalmuseum.jp/column/collection/tykwirelesstelephone.html
もう1つは2024年時点でのわたしたちからの視点です。無線でいうと現在はスターリンクレベル。個人で携帯端末持って無線でデータをやり取りしています。すげーな人類。
この2つをわざわざ分けているのは、『ブランバルド大佐たちが知らない知識であっても、読者側は知っている知識かもしれない』というポイントがあるからです。
ブランバルド大佐たちにとっては、伍長が銃の場所を知り得た理由は神秘かもしれない。ですが2024年の知識で見れば神秘でなく、解き明かされた科学的根拠があるかもしれません。
じゃあ2024年の知識で、伍長が銃の場所を知り得た理由を考えてみます。
結論から言ってしまうと『音』か『光』じゃないかと思います。
ブランバルド大佐は本来オカルトとか信じないタイプです。20巻で明確に断言してます。
「俺は世の中に超自然的な力など存在しないと思っている。
ヤマ勘も験担ぎも人体に作用する科学的作用だと」
パンプキン・シザーズ20巻
しかし彼はこういうことも言ってます。
「合理的たる鉄と火薬の世界…
それを蝕むような…
蒼い―炎だ…」
同巻
このページの前に逃げている伍長の足ぽいのと炎の残像のコマがあるので、ブランバルド大佐が感じ取っているのは伍長のブルーランタンの光で間違いないと思います。
伍長のランタンの仕組みについてはミュゼが16巻で解説しています。
簡単にいえばランタンが発光すると信号が出て、伍長の脳内にあるチップみたいなのに作用する。するとチップが電気を発生させて殺人思考へ誘導する。無線スイッチですよね。
この信号については、『電信』つまり電波じゃないかと思われてました。というのはミュゼが『話せない』と言っていて、その理由として『情報部長にお願いされているから』と挙げています。
ケルビムが重要視してる技術っていったら無線ですから、ストレートに電波と思ったわけです。
ところが電気についてはスプリューウェル記者が直接聞いています。
「(ランタンが起動すると)トルマリンみたいに電気でも出すのか?」
パンプキン・シザーズ16巻 カッコ内著者
これについてミュゼはこう答えます。
「目に見えず空間を伝わる…波のようなモノ…かしら」
同巻
『電気』とも『電波』とも言ってないんですよね。
じゃあ一体どうやってランタンを起動させてるのか。
候補は2つ。音(高周波)と光。
ランタンを起動させる『なにか』については、次のような事がわかってます。
1.遠くからスイッチを起動させることができる波のようなもの
2.ブランバルド大佐のような、特に改造を受けていない人でも個人によっては感じ取れるもの
2から考えてみます。
たまに、隣の部屋のテレビのスイッチがついてると感じ取れる人がいます。テレビが動作すると、高周波の音が響きます。人によってはこの高周波が聞き取れて、「あ、隣でテレビついた」って分かるそうです。
この高周波をランタンの作動に使ってれば、ブランバルド大佐にも感じ取れるし、電波でもないという条件が満たせます。
ただし問題が一つ。
高周波を聞き取るには耳がいいことが条件です。当たり前ですね。
でも戦車乗りとか戦車関係者には、とっても耳が悪いひとが多い。耳栓つけないから。
戦車砲の音はとんでもない音量です。なので耳栓が推奨されますが、付けると会話がめんどくさい。なのでついサボって耳悪くする人が多いんだそうで。
伍長の耳がいいと言われてましたが、そもそも論として1巻時点で鼓膜破っています。その上耳栓とか絶対に与えられてそうにもない901兵。
耳がいいわけがない。むしろ伍長の聴力はマッハでやばい。
ブランバルド大佐も、耳栓つけてるタイプに見えないし、そんなに耳が良いかというと疑問です。
次に光。
これは紫外線か赤外線かどっちか。
ごくたまに紫外線が見える人がいるそうです。紫外線も無線には使えますね。赤外線もありますが、離れた距離で感じ取れる赤外線出してたら燃えます。多分。
これだと矛盾なく使えます。あと「厳密に言えば光は電磁波じゃねえの」って人は、校舎の裏まで来てください。たぶんカウプランの高弟でもそこまで行ってない人はいる。
さて、ランタン起動が音か光を使ってるとしましょう。
アインシュス・ゲヴェーアにも似たような技術が使われていたとしたら、辻褄が合います。
べつにランタン起動させる信号を出す必要はありません。たまたま、合金研究してたら、ランタン起動させる信号を出す金属がアインシュスにもちょうどよかった、その程度のことかもしれません。
もしくは、901兵が使うものなので、似たような信号を出せるようにしておいた。この可能性もありますね。
あくまで『似たような』です。使うたびに901のスイッチ入ったら大変ですから。
この仮定だと、伍長がアインシュスの場所が特定できた理由がわかります。
『ランタン起動に使われてる信号と似てるのがアインシュスからも出てたのでなんとなく分かった』ですね。