靴下はどこに消えた

片方だけの靴下置き場がうちにある。文字通り、片方しかない靴下を集めて置いてある箱だ。

靴下というのは、買った時と履いた時は両方揃っている。しかるにだ、脱いだあと、洗濯した後、履く時には片方がない。おかしい。絶対にどっかにあるはずなのである。

それなのに見つからない。未練がましく、片方だけの靴下を貯めておくが、そろった試しがほとんどない。

こないだ掃除中に靴下を見つけ、「あっこれ片方が靴下置き場にあるやつ!」と、両方そろった時の脳汁は滝のように出た。

人生かけた神経衰弱に勝ったようなもんである。

この靴下片方どっか旅立つ問題には、みんなな悩まされていると見える。同じメーカーの同じ色の靴下を複数買ってそれしか履かない、という解決策もある。

しかしそれは根本的解決といえるだろうか。靴下がどこかに行って見つからない、という事態は解決してないのだ。

自分の部屋は自分しか入らない。掃除も自分でしている。

然るに靴下は部屋のどこかにあるはずなのだ。絶対に。

よく考えたらあるはずのものがないんだからホラーだ。しかしみんな気にせず靴下は片方どっかに行くもの、として片付けている。

私は思うのだ。靴下たちは異界に旅立っているのではないかと。

その異界は、足の匂いと埃と数多の靴下たちが融合した、よく分からない、靴下だけに分かる靴下のための楽園なのかもしれない。

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