ネタでよく「から揚げにレモンをかける」ってのが極悪扱いされてますね。
あれ、飲みの席だけに発生する特殊状況ですよね、考えてみりゃ。
普通、例えばレストランとかファミレスとか定食やさんでから揚げを頼むとしましょう。
そのから揚げは注文した人のものです。
たまに「シェアしよう」とかいう話になりますが、言わなかったら注文者のものです。
まして、「から揚げ定食」を頼んだなら、その唐揚げは注文者のもの。
レモンだろうがタルタルだろうがしょうゆだろうが好きにかければ済む話です。
これが「飲みの席」だと違います。
各自、枝豆だの唐揚げだの注文しますが、食べ物においては注文者の所有ではない。そこに参加してる人全員のものです。
サラダや枝豆は取り分けるまで、みんなのものであり、誰か一人のものではない。
そのため、から揚げという公共物に、個人的な味付け——レモンという調味料をかけることがタブー視されるわけです。
「このから揚げは全員のものだが取り分が決まっていない。それなのに所有を主張した。許せん」
レモンかけられた、とおこるひとは、自分の所有物になるはずだったから揚げが損なわれたから怒るわけです。
これはみんながみんなの分を取り分けて飲むという、飲みの席特有の現象です。
飲みの席ではサラダでもから揚げでも全て誰かのものでなくみんなのもの。個人が所有するものは酒の入ったグラスだけです。
そして、サラダや唐揚げを取り分けるのに一種の緊張感が生じます。
会社の飲みなら上役より先に箸をつけていいのか。合コンなら欲張りと思われないか。いろんな考えを交錯させ場の雰囲気を読みつつ食べるわけです。
ちなみに中世ヨーロッパでは、肉の取り分けでガチの殺し合いになるため、非常に厳しいマナーが定められました。
肉を切る専門のボーイがいて、アイルランドでは誰がどこの肉を食べるのかまで決まってたそうで。
それもこれも、飲みの席で取り分けられていない肉野分配は難しいからです。
そう考えると、唐揚げにレモンをかけるな論争は、中世ヨーロッパあたりにさかのぼるのかもしれません。
だいたいレモンを爆弾に喩えたひともいるくらいですし、火種になるのはしょうがないのかもしれません。
余談ですが、わたしは唐揚げとポテトにレモンか、モルトビネガーをかけるのが好きです。フィッシュアンドチップスのたべかたです。あんまり賛同者がいないので、一人の時だけにしています。